東京コンフィデンシャル

ライター岩戸佐智夫の日記と記録です。 過去に書いた記事、旅の日、大好きな食のことなどを綴っていきます。

Monday, March 13, 2006

カリブの旅3 アンティグワ・バブーダ

 25日(火曜日)、朝8時アンティグワに到着。アンティグワ・バブーダは2つの島で構成された国で、船が着くのはアンティグワ島の方である。
 これまでの島よりも山が低い。船から島を眺めているとニジェールの風景を思い出した。アフリカに雰囲気が似ているのだ。




 船から下りると、街は船着き場から始まっていた。観光客相手の土産物街だ。
「タクシーで観光しないか。3時間、島の南まで行って米ドルで15ドルだ」
 プエルトリコの6分の1の物価だ。もっともこちらは相乗りである。
 ここではさしたる時間も無かったので、港の回りを歩いて過ごすことにする。
 暑い、とにかく暑い。毛穴という毛穴から汗がエネルギーを連れて流れ出してくるようだ。
 この島は9月から雨期だという。確かに雲は多いが、取りあえず雨は降りそうにない。
 まるて゜蒸し風呂である。



 パブリックマーケットまで歩いてみることにした。ブラブラ歩くとすぐに土産物街を通り過ぎる。土産物街を過ぎると風景は一変した。
 船の上で感じたとおり、アフリカの雰囲気がとても濃い島だ。あまり安全な気は しない。別にアフリカが危険だというわけではないが、よそものが我が物顔で歩いてはいけない地域という意味だ。
 何故かいつも誰かから見つめられているように感じる。他の島がどこかの領土なのに比べ、ここは独立した島だ。それだけ自意識が強いのだろうし、宗主国か らの援助が無い分貧しくもあるのだろう(アンティグワ・バブーダをネットで検索してみたが、ネットカジノで有名な国だという)。
 僕の前を若い女性が歩いていた。彼女も同じ方角に行くようだった。等間隔で市場の方まで歩くことになった。心の中で、『なんだかつけているようで嫌だな』と思っていた。
 そんな時、彼女が突然、振り返って言った。
「ミスター。何か落としたよ」
 戸惑いながら振り返るとジーンズのお尻のポケットに入れていた地図が路上に落ちていた。
 彼女の背中に目があるわけでもないし、超能力者でもないと思うから、前にいる誰かが合図をしたのだろうと思う。やはり僕は見られていたのだった。
 7分ほどで、市場に着いた。
 建物は立派だが、市場自体はさほど大きくない。もっとも暑い南の島の市場は昼からが盛況だから、この時間はヒマなのかもしれない。



 それにしても暑い。汗が噴き出してくる。
 あまりの暑さに、船着き場の近くのカフェでビールを飲んだ。
 

 ラベルを見るとWADADLIと記されている。よく読むとアンティグワの地ビールだった。一 本、米ドルで1ドル50セント。安い。氷の中に漬け込んでいるようで、かき氷の固まりがこびりついている。その冷たさが心地よかった。もう一本、もう一本と本数を重ねた。少しアルコール度数が高いのか、それとも暑さのせいなのか酔いの回りが早 いように感じる。



 辺りにはティンドラムの涼やかな音が満ちていた。路上ではティンドラムを演奏し、マラカスが音を立てている。港にはラスタカラーのミュージシャンが集ってい たのだ。船の着岸は一つのイベントなのである。
 やがて乗船時間がやってきた。
 船に帰るとばったりとお向かいの部屋のメアリーと出会った。
 メアリーはオハイオから一人でクルーズの旅をしている中年女性だ。
 クルーズにはよくやってくるのだと語っていた。
「どうしてた?」、と僕が訊ねると、
「島の反対側で泳いでたよ。ここは島の反対側が良いところなのよ」と答える。
 なるほど、島々によって見所が違うのだ。
 その選択も良かったのかなとも思ったが、でも久しぶりに味わう異邦人としてのアフリカ感覚も、緊張感に溢れて良いものだった。

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