カリブの旅6 アルバ
28日(金曜日)。
オランダ領アルバに着く。南米に近い島だ。午前8時半にプレスツアーが出発と随分朝が早い。バスの窓の外には、サボテンの荒野が広がっていた。
ツアーガイドが、「アリゾナかネバダみたいでしょう?」と笑って言う。
あまりに乾いた風景に二百年前にやったきたというオランダ人はいったい、何がうれしくてこの島を占拠し続けたのだろうとすら考える。
前のグアドロープとは確かに風景が全く違う。どうやら珊瑚礁隆起の島らしく、白っぽい土と石灰岩が見える。
それにしても家々は案外と綺麗だ。貧しさがあまり感じられない。
確かに豊ではない部分も見えるのだが人々の視線は、貧しい島々に時々あるような刺すようなものではない。
島は唯一の娯楽らしい、選挙で賑わっていた。
子ども達も素直だ。カメラを向けるとニッコリと笑い、照れながらいろんな格好をするなど、まったく子供らしい反応を見せてくれる。
ガイドに、「この島の人々は豊ではないけれど、それほど貧しい感じもしない。デザートだらけのこの島に産業があるとも思えないけれど、一体何で生計を立ててるんだい」とたずねてみると、
「ツアーだよ。ここの資源は観光なんだ」、と答えた。
島にはBARASHIと言う名の地ビールもあった。
途中でお昼に立ち寄ったボートハウス風のレストランで美味しいクレオール料理とともに味わった。
「この場所の水はとてもいいんだよ」
醸造所がある辺りを指してガイドが言う。簡単な話だった。オランダがこの島を占拠し続けた理由は水だったのだ。
ダイビングショップのインストラクターが近づいてきて僕に言う。
「うちのショップは沖縄にもあるんだけど、日本人はここまで来てくれないね。アルバは良い島なのにさ。
日本に帰ったらアルバまで来るように行ってくれないか? ライターなんだろ」
僕は笑って答える。
「OK。もの凄く良い島だと書いておくよ」
青い海で水遊びをすれば巨大な熱帯魚が近づいてくる。僕は近所の子供達と戯れる。
後に港に帰って島の豊かさの理由がわかった。港の前にはカジノと土産物屋がずらりとならんでいた。どうやらヨーロッパやアメリカからかなりの観光客が入ってきているらしい。
そしてクルージング最後の日。
船はプエルトリコのサンファンを目指して進み、再び1日中海の上だ。僕はデッキチェアーに横になり、本を読み、海を眺める。明日は、動かない大地を踏み、空を飛び再びシカゴを経て、日常が待っている日本へと帰らねばならない。
目の前の海をどこからどこへいくのかトビウオを群れが、まるで小さな鳥が移動するように飛んでいった。
(『カリブの旅』1~6は『船の旅』誌掲載の『海流の中の島々』に加筆をおこなったものです)
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